相続手続きにおいては、多額のお金が動くため慎重に遺産分割を行い相続人全員が納得できるようにする必要があります。ですが、円滑に進まないことも多くあり、相続人が多い場合などがその例です。
また、遺産分割協議は相続人全員の参加を必要としていますが、何らかの事情で予定が合わないことや、話し合いに意欲的ではない相続人がいたりすることもあるでしょう。
このように話し合いがなかなか進まない場合は、遺産分割調停を利用することが可能です。
相続人が家庭裁判所に申し立てを行うことで遺産分割調停を希望することが可能です。
すると裁判所から選任された弁護士が調停員となって仲介の役割を担い遺産分割を進めてくれます。
特に法律上での判断が求められる遺留分、寄与分、特別受益などの案件は調停が利用されます。
遺留分
法律で定められた相続人の権利です。遺言書に特定の相続人が全財産を相続すると記載されていた場合、他の相続人は遺留分を主張して最低限の相続分を確保することができ、この権利は遺言によっても奪うことはできません。
遺留分が認められるのは配偶者、子どもや孫などの「直系卑属」、親や祖父母などの「直系卑属」の範囲の相続人になります。
しかし遺留分はあくまで権利であるため、請求の有無は相続人の判断に委ねられます。特定の相続人への全財産の相続にその他の相続人が納得しているのであれば問題はありません。
特別受益
相続人間の不公平を避けるために定められたものであり、被相続人の生前に1人の相続人に対して多額の贈与があった場合、その分を相続財産に含めて公平な遺産分割をすることです。
特別受益だと認められる場合は、相続人のなかで被相続人から遺贈を受け、または生計の基礎として役立つような資本等の贈与を受けた者があるとき、と定められています。
よって相続人が被相続人以外の者から受けた贈与や相続人以外の者が被相続人から受けた贈与は特別受益には含まれません。
調停に必要な書類
- 遺産分割調停申立書
- 財産目録
- 相続関係図
- 相続人全員の戸籍謄本
- その他
遺産分割調停の申立てが受理されてから
調停は最低でも4、5回は行われ、頻度は1か月に1回が一般的です。
しかし調停が不成立となった際には裁判官による審判がなされます。遺産分割は裁判や訴訟を提起する前に、必ず調停をしなければならないとする制度(調停前置主義)をとっています。そのため調停を経たのちに審判へと進む流れが原則です。